A WORLDWIDE ARCHIVE OF GRETSCH 6120

THE STORY BEHIND THE ICON

Why
6120?

なぜ、6120なのか。

鮮やかなオレンジのボディ。
ホロウボディならではの豊かな響き。
Bigsby、Filter’Tron。
そして、時代を越えて受け継がれる物語。

ただ長い歴史を持つギターではない。
プレイヤーとともに、進化を続けてきたギター。

1954 — TODAY

GRETSCH 6120 / HISTORY & CHARACTER

Gretsch 6120は、ただ長い歴史を持つギターではない。Chet Atkins、Eddie Cochran、Duane Eddy、Brian Setzerをはじめ、時代を越えて多くのギタリストが6120を手にし、それぞれの音楽とともに、このモデルの歴史を作ってきた。

同じ「6120」という名前でありながら、1955年製と1959年製、そして1960年代の6120では、姿も構造もサウンドも異なる。

01

THE BEGINNING

Chet Atkinsと6120の誕生

Chet Atkins

CHET ATKINS

THE BEGINNING OF 6120

1954

物語の始まりは1954年。
Gretschと、当時すでにカントリー・ギター界を代表する存在となっていたChet Atkinsとのパートナーシップから、6120は生まれた。

Gretsch公式資料によれば、Chet AtkinsとFred Gretsch Jr.が契約を交わしたのは1954年7月。プロトタイプの開発を経て、Chet Atkins Hollow Body Model 6120は1955年1月からディーラーへの出荷が始まった。

初期の6120には、鮮やかなオレンジのボディ、「G」ブランド、ウエスタンをモチーフにした指板インレイなど、ひと目でそれと分かる強烈な個性が与えられていた。

興味深いのは、Chet自身がこうしたウエスタン調の装飾を必ずしも好んでいたわけではなかったことだ。
それでも彼はGretschとともに、エレクトリック・ギターをより良いものにするため、演奏性、サウンド、構造について多くのアイデアを提案していく。

6120は、最初から完成されたギターだったわけではない。
Chet AtkinsとGretschが、実際に弾きながら改良を重ねていったギターだった。

02

EVOLUTION

「6120」は、毎年同じ6120ではない。

Same name.
Different
character.

年式を知ることは、
その一本を知ること。

ヴィンテージ6120の面白さのひとつは、年代によって仕様が大きく変化していることにある。
同じモデルナンバー「6120」を持ちながら、数年間のうちにピックアップ、指板インレイ、ブレーシング、トレモロ、ボディ形状などが次々と変化していった。
今回参照した資料(丸ごと一冊グレッチ”6120”)に掲載されている個体を追うだけでも、その変化は明確に確認できる。

MODEL YEAR主な特徴
1955初期6120。Gブランド、ウエスタン・モチーフ、DeArmondピックアップなど、初期型ならではの仕様
1956ヘッド、インレイ、トレモロ、ハードウェアなど細かな仕様変更が続く。同一年でも複数の仕様が存在する
1957Gブランドが姿を消し始め、後期にはFilter’Tron、エボニー指板、Neo-Classic系インレイへと移行
1958Filter’Tron、Neo-Classicインレイ、トレッスル・ブレーシングなど、後の6120を象徴する仕様が整っていく
19591950年代シングルカッタウェイ6120の完成形ともいえる時代。現在も特に注目される年式
1961–62頃ボディが薄くなり、ダブルカッタウェイを採用したElectrotoneスタイルへ大きく変化

1958年にはChet Atkinsの要望を背景に、Filter’Tron、Neo-Classicインレイ、トレッスル・ブレーシングなどが登場したとGretsch自身も説明している。
トレッスル・ブレーシングは、ホロウボディのフィードバックを抑えながらサステインを高めることを目的とした構造だった。
さらに1961〜62年頃になると、Gretschはより薄いボディとダブルカッタウェイを採用したElectrotoneスタイルへと大きく設計を変更していく。

だからこそ6120では、「何年製なのか」が非常に大きな意味を持つ。

03

WHY 1959?

なぜ1959年製6120は特別なのか。

6120の歴史を語るとき、避けて通れない年式のひとつが1959年である。
その象徴的なプレイヤーの一人がBrian Setzerだ。

Brian Setzerが言うには、Stray Cats時代に長く使用していた1959年製6120は、長年にわたって酷使したため現在は第一線から退いているものの、彼にとって非常に特別なギターだという。

Brian Setzer

BRIAN SETZER

STRAY CATS

1959

また彼は、1958年製と1959年製の構造や響きの違いについても、自身の経験をもとに興味深い説明をしている。
Brian Setzerが言うには、彼が触れてきた1958年製6120では、ボディ内部のブレーシングの影響によってトップの振動が抑えられているように感じる一方、1959年製ではアンプの前に立ったとき、ギター全体が振動するような感覚があるという。
彼はその違いを、ボディトップとブレーシングによって生まれるレゾナンスの違いとして捉えている。

もちろん、これは「すべての1958年製と1959年製が同じ」という意味ではない。
ヴィンテージGretschには個体差があり、さらに仕様変更の過渡期に製造された個体も存在する。
あくまでBrian Setzer自身が、実際に弾いてきた6120から感じ取ったプレイヤーとしての見解である。
それでも、この言葉は1959年製6120がなぜ多くのプレイヤーを惹きつけるのかを考えるうえで、とても興味深い。

自分の身体と同じ

Brian Setzer

手に取って弾き始めれば、余計なことを考える必要がない。
それほどまでにプレイヤーと一体になれること。
それもまた、6120というギターの魅力なのかもしれない。

04

THE SOUND OF 6120

ホロウボディでありながら、ステージで鳴らすためのギター。

HOLLOW BODY

FILTER’TRON

BIGSBY

BRACING

ステージで鳴らすための、
ホロウボディ。

6120のサウンドを、一つの言葉だけで表すことは難しい。

  • ボディ内部の空気まで振動する、ホロウボディ特有の響き。
  • Filter’Tronによる、クリアで輪郭のあるサウンド。
  • Bigsbyによる独特のビブラート。
  • そして、ブレーシングによってコントロールされるボディの共振。

特に1950年代後半の6120では、ホロウボディらしい豊かな響きを残しながら、サステインを増やし、フィードバックを抑えるという、一見すると相反する要求を実現するための試行錯誤が続けられていた。
Gretsch公式もトレッスル・ブレーシングについて、トップとバックをより強く結び付けることでサステインとフィードバック耐性を高めながら、ホロウボディらしいトーンを残すための構造だったと説明している。

つまり6120は、単なる「箱物」ではない。
ホロウボディの鳴りを、エレクトリック・ギターとしてどうステージで生かすのか。
その答えを追い続けたギターでもある。

05

SERIAL NUMBER

シリアルナンバーから6120を読む。

Read
the number.
Find
the story.

シリアルは「答え」ではなく
「手掛かり」。

ボディ形状、ピックアップ、
インレイ、ブレーシング。
その一本のディテールと、
あわせて読み解く。

ヴィンテージ6120を調べるとき、重要な手掛かりのひとつになるのがシリアルナンバーである。
1950年代のホロウボディGretschでは、ボディ内部のGretschラベルにシリアルナンバーが記載され、fホールから確認できる個体が多い。

ただし、ここで注意しておきたいことがある。
Gretschの年式は、シリアルナンバーだけで断定できるとは限らない。
当時の仕様変更は暦年と完全に一致しているわけではなく、モデルイヤーや仕様変更の過渡期によって、製造時期と外観・仕様にずれが生じる場合もある。

そのため6120.jpでは、シリアルナンバーだけでなく、
シリアルナンバー × ボディ形状 × ピックアップ × インレイ × ブレーシング × ハードウェア
などを総合して、その個体を見ることが重要だと考えている。

1954–1965 SERIAL NUMBER GUIDE

シリアルナンバーから見る、おおよその年代
1950年代から1960年代前半については、シリアルナンバーの範囲から、おおよその製造時期を推測することができる。

SERIAL NUMBERAPPROX. YEAR
90xx–130xx1954
130xx–180xx1955
180xx–210xx1956
210xx–260xx1957
260xx–300xx1958
300xx–340xx1959
340xx–390xx1960
390xx–450xx1961
451xx–530xx1962
530xx–630xx1963
630xx–770xx1964
770xx–840xx1965

この表は、あくまで製造時期を考えるための目安である。
実際の個体を確認する際には、シリアルだけではなく、その個体が持つ仕様や特徴もあわせて確認したい。

1965–1972

この時期のシリアルナンバーは、月 + 年 + 製造順という考え方で読むことができる。
先頭の1〜2桁が製造月、その次の数字が西暦の下一桁、残りが製造順を示す。

たとえば、125247であれば、
12 = 12月
5 = 1965年
247 = 製造順
となり、1965年12月製造と読むことができる。

参照資料では1965〜1972年について、この方式が紹介されている。
ただし、月表示については資料中に特殊な記載も見られるため、実際の個体を判断する際には、シリアルだけでなく他の仕様もあわせて確認することが重要である。

1973–1981

1973年以降は、シリアルナンバーにハイフンを含む形式が使われるようになる。
基本的な考え方は、月 − 年+製造順である。

たとえば、12-427であれば、
12 = 12月
4 = 1974年
27 = 製造順
という読み方になる。

年代には西暦の下一桁が使用され、1973〜1981年の範囲と照らし合わせながら判断する。
この時期になると、シリアルナンバーを見ることで、製造年月をより直接的に読み取ることができるようになる。

FENDER買収前

その後、Gretschのシリアル体系は再び変化する。
この時期の代表的な形式は、YYMMXXX-XXXのような構成で読むことができる。
前半部分には、製造年 + 製造月 + モデルナンバーが組み込まれ、ハイフン以降が製造順を示す。

たとえば、9611612-245であれば、
96 = 1996年
11 = 11月
612 = モデルナンバー下3桁
245 = 製造順
という読み方になる。

6120の場合、モデルナンバーに関係する数字がシリアルの中に含まれている点も興味深い。
単なる製造番号ではなく、そのギターが「いつ、どのモデルとして作られたのか」を読み取る手掛かりになっている。

FENDER買収後

Fender Musical Instruments Corporation傘下となった後の日本製Gretschでは、JTから始まるシリアルナンバーが見られる。
JT = Japan / Terada
日本の寺田楽器製作所で製造されたことを示す表記である。
続く数字は、製造年 + 製造月 + 製造順として読む。

たとえば、JT03114567であれば、
JT = Japan / Terada
03 = 2003年
11 = 11月
4567 = 製造順
となる。

現在の6120オーナーにとっては、この「JT」から始まるシリアルナンバーを目にする機会も多い。
ヴィンテージ6120だけでなく、日本で製造された6120を調べるうえでも、シリアルナンバーは、その一本の背景を知るための重要な手掛かりとなる。

SERIAL NUMBER IS A CLUE

シリアルは「答え」ではなく「手掛かり」。

シリアルナンバーは、その6120がどの時代に生まれたのかを知るための重要な情報である。
しかし、シリアルナンバーだけで個体のすべてが分かるわけではない。
特にヴィンテージGretschでは、仕様変更の過渡期や個体差、長い年月の中で行われたパーツ交換や修理なども存在する。

だからこそ、

  • SERIAL NUMBER
  • BODY
  • PICKUPS
  • INLAYS
  • BRACING
  • HARDWARE

それぞれを見ながら、一つの個体を読み解いていく。

シリアルナンバーは「答え」そのものではない。
その6120が歩んできた時間を知るための、最初の手掛かりなのです。

06

MORE THAN A GUITAR

一本一本に、違う6120がある。

One guitar.
Countless
stories.

同じ「6120」というモデルナンバーを持ちながら、その姿も、構造も、サウンドも異なる。

さらにそこへ、オーナーによる改造、修理、パーツ交換、傷、そしてステージや日常の中で過ごした時間が加わっていく。
だから、同じ年式、同じモデルであっても、一本一本の6120には違う物語がある。

6120.jpが残したいのは、単なるスペックだけではない。
いつ作られ、誰が手にし、どんな音楽を奏で、どんな時間を過ごしてきたのか。

一本のGretsch 6120と、そのオーナーの物語。
それを世界中から集め、記録し、未来へ残していければと思います。